許嫁(いいなずけ)・壱

夫婦喧嘩? /会いたいのに会えない





「昔、匠吾さんには親が決めた許嫁がいたらしい。
それが夏目組のお嬢さんの伊都さんと言う人だ。」




「親が決めた許嫁!」




私と匠と同じ。




「だが、匠吾さんは匠真さんの母親と恋に落ちて、婚約を解消したんだよ。
莫大な慰謝料を支払ったと、当時ずいぶん噂になったらしい。」






パパの話にドクン!と心臓が跳ねた。



婚約を解消した?
他の女性と恋に落ちて。



匠と仲違いした私を十分不安にさせる話だった。





黙り込んだ私にパパは笑いかける。




「大丈夫だよ。匠吾さんは小さいときに婚約したが、成人するまで顔を合わせなかったんだ。
定期的に会って愛を育んだお前達とは違う。」










そうだろうか。



もう私と匠は入籍していて、私は松江の人間だけど。

磐石だと思ってた足元が、ふわふわと不安定に崩れ始めたような錯覚。




夏目伊都さん…、匠吾ちゃんに婚約破棄されて、どんな人生を送ったんだろうか。





ぼんやりと思考の海に沈んでいると、
スマホがメールを受信した。




表示されたアドレスは、



****hayato@docomo.ne.jp



「hayato、はやと?隼人!」


そう言えば、隼人君の入学祝いに匠真パパが『スマホを買う』とか言って、橘に『まだ早い』とか言われてたっけ。



じゃあ、隼人君からのメール?



半信半疑でメールを開いた。







0
  • しおりをはさむ
  • 5339
  • 4004
/ 849ページ
このページを編集する