許嫁(いいなずけ)・壱

夫婦喧嘩? /奇縁







『…もう少ししたら出るね?』



昼過ぎに取った春菜の電話。




「ああ。気を付けてな。」



返事を返したものの…





『匠?』




「あ?」




『なんだか騒がしくない?』




不味いな気付かれたか。





「…まあな。夜は凍夜の歓迎会だしな。」




バタバタしてたのは事実。




『…匠!』




…そんなことで誤魔化せねえか。





「ジイさんが隠れんぼしてんだよ。」





『え?匠吾ちゃんが隠れんぼって、何!』



「聞いたまんまだ。

夏目伊都って元婚約者柄みで騒ぎを起こしたから、

早い話、皆でお仕置きしたんだよ。」





『お仕置き?』





「…まあ。」




おいおい、咎めるようなニュアンスだな。





「弥生さん、皐月さんが説教して、整体師にマッサージ受けさせただけだぞ。」





『…それがお仕置き?』




「腰痛だからって、夏目の弔問を俺と親父に押し付けたから整体師を手配したんだ。」





『…それだけで隠れんぼ?』




疑ってんな。
色々なことをはしょってるが嘘じゃねえし。





「ジイさんは朝飯食ってすぐ部屋に籠っちまったんだよ。」





昼前に様子を見に行ったらもぬけの殻。




『それで隠れんぼ?』




「…拗ねたんだろ。松江の敷地は半端なく広いし、隠れ場所は有り過ぎるくらいだしな。」




一種の嫌がらせだ。




『GPSとかは?』





「スマホは部屋に置き去り。護衛も本家の中に居るときは付かないしな。」



屋内に監視カメラはあるが場所はジイさんも知ってるし、映り込みは無かった。

今日は午後から春菜が帰るし、夜は凍夜の歓迎会。

本家の組員は何時もより多かったし、気付かれずに部屋を抜け出すなんて自分の意思でやったとしか考えらんねえ!




「大丈夫だ。春菜が帰る迄には見付けるさ。」






なにしろ、充と橘がぶちギレてるからな。





『…あんまり匠吾ちゃんを苛めないでね?』




春菜が心配してるのはわかるが、約束は出来ねえな。











それからしばらくして、
ジイさんは俺達が思いもよらない場所から見付かる事になる。







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