許嫁(いいなずけ)・壱






春菜との通話を終えて1時間経った頃。





「匠さん。見付かりました。」




疲れた声の充に頷いた俺は。




「何処にいた。
若頭邸か!中庭か?まさかの仕置き部屋か?」



思い付く限りの場所を羅列するが、充は俺に力なく首を振る。





「場所は関東。既に栃木県に入ってます。」




はああっ!?




栃木県って言えば…、




「夏目伊都の車に隠れてやがったのかよ!」




あんの!クソじじいっ!!




黙って俺にスマホを差し出す充。




なんだよ?

眉をしかめると、




「私の持つ携帯の1つに組長自ら電話してきました。
夏目伊都の携帯からです。」




マジか!?
半信半疑でスマホを耳に宛てた。





「もしもし?」





『匠か、ワシじゃ!』





「ワシじゃ!じゃねぇぞっ!
このクソじじいっ!!」


のほほんとしたジイさんの声に、プツン!と堪忍袋の緒が切れた。




「松江は昨日からジイさんのせいで大騒ぎなんだぞ!」





『そう怒るな。』




「怒るに決まってるだろっ!!」







『ちゃんとこの目で見届けたかったんじゃ。

伊都さんの落ち着き先を。』




「‥‥‥」





『話しても反対される気がしての?』




「‥‥‥」




神妙なジイさんの声にうっかり同意しそうになるが、




「お仕置きに拗ねて、逃げ出したんじゃねえのかよ!」




尖る俺の声を、





『さあ…の?』




ジイさんはボケた振りでかわしやがった。






0
  • しおりをはさむ
  • 5345
  • 4015
/ 849ページ
このページを編集する