許嫁(いいなずけ)・壱

好敵手(rival) /春奈の兄姉




「正確にはイビられてたって感じかな。」



「おい!」



悠里、平然と言うなよ。



「まったく、情けないよな。あんなチビの癖して一丁前に俺らに、
てか、特に姐である母親に気を使わせ無いようにしてんだぜ。」



悠里の整った顔がくしゃりと歪む。




「しょせん、俺らはダメですね。汚い女の裏側に気づけない。」



羽川まで自嘲の笑みを浮かべてた。




「俺らはダメって、じゃ気付いたのは…」




「ああ。羽川の弟。春菜より2つ上なんだがこいつが、さ。」



「春菜が星を見ながら、屋根で泣いてるって言うんだよ。」



悠里がポツリと呟く。



「『は?』って感じでしたね。誰も気付け無かった。」




「気付いたのは羽川の弟凍夜(トウヤ)だけだった。」


羽川凍夜。春菜より2つ上か。
羽川の弟なら、さぞや賢いんだろうな。

この時羽川凍夜に思った事はその程度だった。



「…それにしても、屋根で泣いてるってのは?」




「ああ、春菜はお転婆だからな。このビルの屋上の給水塔に登ってよく星を見てるんだよ。屋根ってのはそこの事。」



悠里の話を聞いて充が質問する。



「去年まで幼稚園児だったでしょ。梯子とか登れるんですか。」



「ま、親父が甘いから春菜専用に小さな梯子をかけたんだ。そこを…猿みたく登るな。」




「「「へえ。」」」




猿みたくか、見てみてえな。

そう言えば、去年抱き上げた時そんな話をしてた気がした。







0
  • しおりをはさむ
  • 5339
  • 4004
/ 849ページ
このページを編集する