足を捕られて…

泥沼の恋

「おはようございます。」



「おはよう。仲島さん。」



何時ものように挨拶をして、私のボディーガードに笑いかけた。
仲島一(ナカジマハジメ)。
30代後半のこの人は細身でキツネ目。とてもボディーガードには見えない。どちらかと言えば専属運転手。男男してない彼が私は気に入ってる。



「すいません。若頭は今朝は…」



車のドアを開けて頭を下げる仲島さん。



「ふふっ。忙しいんでしょう?
わかってるから。」



私の返事に仲島さんは困った顔をした。


私の彼氏であり保護者代わりでもある人の名前は霧矢全(キリヤタモツ)。28才。
部下からは若頭と呼ばれるヤクザだ。
私は齢17才にして彼に囲われているいわゆる愛人。
ちゃんと奥様は本宅にいる。

その奥様はなかなかの焼きもち焼きで浮気がバレると大変らしい。
確かに霧矢はそこそこイケメンでお金持ち…。
ヤクザだけど私にはそれなりに優しい。
ま、愛人にするくらいだから気に入ってるんだろう。

普段は登校する私を車で迎えに来たりするんだけど。
ここ最近は色々忙しいらしく顔を見ていない。

罪の意識が薄れるから有り難い。そう思ったこともあるんだけど、今は…

泥沼の恋なんて人に後ろ指を指される関係だけど、奥さんを押し退けてまで貫きたい思いじゃ無いし、貫かれても困る。



「気にしないでください。
私は自分の立場をちゃんとわかってますから。」



まあ奥様にバレたら簡単に捨てられるだろうから、それまでになんとか…


ぼんやり考え事をしてたら車のタイヤが軋んでいきなり体を右に持って行かれた。



「捕まっててください。
『敵』です!」



仲島さんが叫ぶ。


『敵』って霧矢のだよね。

なんで登校途中の(愛人とは言え)女子高生を襲うかな。

ヤクザの愛人になんてなるもんじゃない。

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