あい・編む 

再出発 /新しい生活

この街で私は新しい名前で生きる。



関東某所。私立芙蓉学園(フヨウガクエン)は住宅街と商店街の狭間の様なところに建っていた。

元々学園のあった土地に宅地や商店街が出来てこの配置になったのだとママが教えてくれる。




「いつの間にかこんなに賑やかな所に建ってるのね。懐かしい。あ!体育館。新しくなったのね。」




隣に立つママが綺麗な目を細めた。
3階建ての白い校舎は昔と変わらないらしい。



現在平日の午後2時。
学校は授業中だ。こんな半端な時間にママと2人で正門前に立ってる理由は、来週からこの学園に編入する挨拶に来たから。



「行こうか、真由加。」



ママに声をかけられて軽く頷いた。今まで通ってた県立高校とはやっぱり雰囲気が違う。
正門に守衛室なんて無かったし。



「こんにちは。」



私達が近付くと40位の守衛さんが愛想良く笑いかけてくれる。



「こんにちは。理事長と面会の約束をしてるんですけど。」




グレーのスーツ姿のママが微笑むと守衛さんの頬が赤くなった。


ママは色白の肌に長いストレートの栗色の髪を緩くまとめてアップにしてる。ぱっちりした目に長い睫毛。特徴的なのは灰色の瞳。ママがハーフである特徴の一つだ。体の線だって完璧。どう見ても30代前半の美魔女。娘の私の目から見ても贔屓目無しの美人だ。

私がママから受け継いだのはやや栗色のストレートの髪くらい。それもショートカットにしてるからあまり似てるようには見えないと思う。




「お名前をお願い出来ますか。」



にっこり笑う守衛さんに私は密かに息を詰め、ママは更に笑みを深めた。



「花房 麗(ハナブサレイ)です。」



途端に守衛さんの顔が固くなった。



「ハナブサ、様で。」



花房組はこの辺りを昔から統べてる暴力団だから。
珍しい名前だしこの街では『花房』イコール『ヤクザ』に変換される。



「ええ。娘が来週からこの学園に通う事になったので挨拶に。」



ママは普通に話すけど守衛さんの表情は固い。
これが花房に向けられる普通の態度。ママに聞いてなければショックだったかも知れない。

畏怖や軽蔑、あまり良くない好奇心の目を向けられるとか、今までの生活には無かったこと。
それでも私は花房真由加(ハナブサマユカ)としてここで生きると決めたんだ。





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