君に惹かれ、君を恋う【完】

第二楽章 /オダマキ

大きく、広い会場。今日の私の舞台。

静かで、期待しかない、私の嫌いな場所。


煌びやかに照らされているそこへ何度も立っているが、何度それを経験していても足も、指も、心臓も、私自身の全てが震える。


しかし、弾かなくてはならない。



それは誰の為でもなく、自分の為に。




「次、小林さんだって」


出番が近づきステージに向かっている際に微かに聞こえた会話。



「え、小林ってあの小林薺?」

「そう。あの小林薺。信じられないよね。私てっきり海外に行ってるもんだと思っていたのに」

「え、私は海外に行ったって聞いたよ?」

「本当に?」

「このコンクールに出てるってことはただの噂だったんだね」

「うん、そうだね。でも、小林さんの演奏聴けるから得した気分だね」

「なかなか聴くこと出来ないもんね」



ついさっき聞いた会話をふと、思い出した。
 

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