君に惹かれ、君を恋う【完】

第二楽章 /フウロソウ


「すいません。迷いましたよね?」



純和風な日本家屋の中に洋室もあるんだと思いながら部屋に置かれたソファーに腰かける。



「彷徨っていましたよ。場所くらい教えてほしかったです」



私を無理矢理この大きな屋敷に連れてき、半強制的にシャワーまで浴びさせた彼に文句を言うと、すみません、彼は笑みを浮かべながら謝った。


と言っても傘を持たずに雨でずぶ濡れになっていた私が根本的な元凶なのだから堂々と文句は言えないのが。

すみませんと言うのはこちらの方だろう。



「それにしてもよくここが分かりましたね。誰かに教えてもらいました?」



悔んでいると彼はソーサに紅茶の入った綺麗なカップを乗せて私の前に置きながら訊いた。その言葉に私は、



「まあ、はい。そうですね」



曖昧に答えた。
 


「へえ、誰に?」



私の返事を訊くとどこか楽しげに、また問うた。それにまた私は言葉を返す。



「……貴方ではない男性です」



なんて素直になれない私の言葉を訊けば、



「あぁ、なるほど、そっちまでいったんだ」



なんて、大して驚きもせず呟いた。
 

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