君に惹かれ、君を恋う【完】

第二楽章 /クチナシ


いつもは感じない気まずい沈黙に目の前に置かれた空になったカップをじっと見つめる。


よく考えれば自分の部屋に入るのに態々ノックなんてしないだろう。それなのに何故私は暁睦だと思ったのだろうか。

この部屋に暁睦の他にも来る可能性がある人がいることに、何故気づかなかったのだ。



「小林さん」



そして、沈黙を破ったのはドアをノックして部屋に入ってきた、この部屋の主である暁睦のお兄さんだった。



「どうして、こんな所にいるんですか」



簡素で、きっとこの部屋へ案内してくれた時から思っていたであろう彼の疑問に私は目線を変えずに答える。



「その、雨に濡れているところをあき…弟さんに見つかり、連れてこられてお風呂まで借りてしまいました。すみません」



そう素直に答えれば、はぁぁぁぁ、とドアの前で腕を組んで立っているハルさんは珍しく重く長い溜息をついた。
 

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