君に惹かれ、君を恋う【完】


今日は大学の定期演奏会がある。


私は演奏会というものがあまり好きではない。

そのことを知っているはずの先生がある日突然


「偶には演奏会に出てみたら。協奏曲とかいいと思うけど」


と白々しく言って定期演奏会の大学内オーディションを強制的に受けさせられた。


そのオーディションを受けた結果が今の状況になるのだが、演奏会に協奏曲という苦手なものに更に苦手な分野まで付け足され今日まで憂鬱な日々を送っていた。


それは毎日溜息が出る程である。



協奏曲はオーケストラがピアノに合わせることが基本だが、ピアノもそこを配慮してオケが合わせやすいように弾かなければならない。

もっと表現をつけたいが、それがその『音楽』を惹き立たせられるのかが重要になり独奏より自分勝手な演奏は絶対に許されない。


私にとってはとても、もどかしい。



それが苦手な理由。



「自由に弾きたいな」



防音されている部屋に私の声だけが鳴った。


それから前日の夜に準備しておいた演奏会の荷物が詰まっている大きな鞄を持って部屋を出た。

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