君に惹かれ、君を恋う【完】

第三楽章 /ナンテン


受賞者コンサートまであまり時間はない。

何を弾こうか悩んでいる暇はなく、直感で『月光』なんてまたまりあちゃんにツッコまれそうな曲を選んでしまった。


今回は第3楽章だけを弾くのだが、この曲は高校の時にも弾いたな。

あの時は技術だけを磨いて、先生に言われるままコンクールに出て、今思えば自分の意志なんてなかったな。


そしてまたもやピアノ生活に戻ってしまった。


しかし、やはりハルさんに会いたい気持ちには勝てなくて、コンクールと帰省期間の反動かは分からないが時間が少しでもあれば丘へ足を運んでいた。



「こんにちは」

「こんにちは」



毎回変わらない挨拶に頬を綻ばせてベンチに座る。



「最近よく来てるね」



ハルさんの別に何の意図もない言葉にぎくっとなる。



「前まで来れていなかったので」



苦笑いで答えれば、そうだよね、とハルさんは頷いた。
 

0
  • しおりをはさむ
  • 14
  • 14
/ 359ページ
このページを編集する