君に惹かれ、君を恋う【完】

最終楽章 /アスナロ


綺麗に晴れた昼下がり。

私はある小さな会場の前で、人を待つ。


あのハルさんとの約束から一ヶ月。私は一度も丘へは行っていない。


チケットは藤宮邸まで行って渡してきた。

インターホンを押せば暁睦が出てきて、ほっと胸を撫で下ろしたことは秘密だ。



それにしても、遅いなあ。

待ち合わせの時間からもう既に20分が過ぎている。

遅刻なんて珍しい。


思いながらきょろきょろしていれば、待ち人が手を振りながら小走りでやって来た。



「遅れてしまってすまない!」



全力で謝る斉藤さんに少し焦る。



「いえいえ、大丈夫ですよ。まだ開場してませんし」

「それでも20分も遅れてしまったんだ。責めてくれ」

「えぇ!?責められませんよ!何か理由があったんじゃないですか?」

「電車が少し遅れていてね…」

「それじゃあ責める理由が無くなりますね」



笑って言えば、まいったな、と斉藤さんは苦笑する。
 

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