君に惹かれ、君を恋う【完】

最終楽章 /スノーフレーク


一昨日のハプニングを終え、今日はいよいよ演奏会本番。

今までにない程に緊張している。



「小林薺」



いつもの様に名前を呼ばれ、振り返れば案の定まりあちゃんがいた。



「今日は来ているの?」



少し面白そうに訊いた。

まりあちゃんが訊いているのはきっとハルさんの事だろう。



「うん。多分、来てる。チケット渡したし…」

「あら、今回はちゃんと渡したのね」



成長したじゃない、と笑うまりあちゃんはやっぱり大人だ。

チケットは案の定完売でキャンセル待ちも沢山いるという話を訊いて、よかった、と安堵したことはつい最近だ。



「今日は彼の為に弾くんでしょう?」

「うん」

「ふふ、初めて聴けるのかしら」

「え?」

「小林薺の本当の、本気の演奏が」



どこか楽しそうなまりあちゃんの言葉に、あぁ、と思う。

そうか。本当の私か。

ちゃんと伝えきれるだろうか。

いや、弾き切ろう。


その為に頑張ってきたんだから。
 

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