君に惹かれ、君を恋う【完】



「今日は着物じゃないんですね」



隣に座ってハルさんにそれとなく言う。



「うん。流石に演奏会に着物を着て行ったら、目立つでしょ?」



その返事に、ちゃんと来てくれたのだと確認できて泣きそうになる。


私の想いは伝わっただろうか。

曲の意味が分からなくてもいい。

曲に乗せた私の想いを受け取って欲しいという一心で弾いた事は伝わっただろうか。



「僕ね、一昨日、柊汰君から訊くまで小林さんがピアニストだって知らなかったんだ」



突然の告白に驚く。


ハルさんには言っていなかったっけ。

ふと思うが確かに自分の口からピアノを弾いているとは言ったことがなかった。



「ずっとフルート奏者だと思っていたのに柊汰君から訊いた時は驚きが隠せなかったよ」

「す、すみません」

「ふふ、これでお相子だね」



笑う彼はきっと私が前に責めた事を言っているのだろう。
 

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