無敵のビーナス 1【完】

走り出せ! /4

来た時は、抱えられていて周りを見る余裕が無かった。


でも、今こうやって歩いてみると色んな物に興味が出てくる。


2階には他にも数部屋あり、部屋の中が気になってしまう。


ここは廃屋・倉庫と呼ぶには小奇麗で、営業中の中小企業のようだった。


「会社みたいだよね」


数歩前を歩く翔の背中に、声を掛けてみた。


いつの間にか握り込まれた手は、いつの間にか恋人繋ぎと言われるものになっていてドキドキする。


周りを誤解させる為とは言っても、やっぱり照れる。


「あぁ、会社だからな」


別の事を考えていた私の肩が跳ね、振り向いた翔は、怪訝そうな表情を浮かべた。


「歩きながら、寝てんじゃねぇよ」


「はぁ?」


『そんな器用な事できる訳ないでしょうよ!』

と反抗したいものの、耐えろ私。


変に騒いで怪しまれたら、今までの恥の数々が水の泡になってしまう。


「堂々と族の溜まり場なんて構えてたら、警察来んだろ?」


このビルについて話す翔の表情は、少しだけ遠く感じた。


「ここは、大崎の傘下の倉庫って事になってる。
元は自動車修理の工場兼営業所で、それもダミー的に数ヶ月営業して移転してる。
で、今は表向き修理工場と在庫置き場として活用中って事になってる」


会社っポイなぁ、と思ったら・・・会社だった。

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