無敵のビーナス 1【完】

走り出せ! /6

敷地の外に出ると、いつもの車が空ちゃんの帰りを待っていた。


「で、どうだった?」


押し込まれるように後部座席に乗り込んだ私に、満足そうな笑みを浮かべる彼。


お洒落な靴先でトントンと前の座席を蹴りながら、隣に腰を下ろした空ちゃんが笑顔で聞いてきた。


「直ぐに帰りたいって言ってくると思ってたのに、随分楽しそうだったね」


爽やかな笑顔と声音なのに、空気が重い。


「電話も無視されるし、翔と何かあった?」


少しだけ首を傾け聞いてくる彼は、楽しげだ。


その表情に安心した私は、気を取り直して、さっきまでの事を話して聞かせた。


その話を身体ごと私に向け、両手で私の左手を包み込み空ちゃんは聞いていた。


まるで私の指先で遊んでいるように、指を絡めたり撫でたり・・・


「空ちゃん、聞いてる?」


「聞いてるよ」


怪しい。

そう思いながらも話している内に、車はマンションへの暗い地下へと潜り込んで行った。

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