無敵のビーナス 1【完】

波乱の幕開け /3

チャイムと同時に教室へ戻った私は、思った通り前の席の可愛い彼女から声を掛けられた。



ミルク飴を貰った時に、サボった事を話そうかと迷ったけど空ちゃんの『アウト』を聞いた今、とてもじゃないけど話せない。



ごめんなさい。



心苦しく思いながらも「トイレ行った時に貧血起こしちゃって」とトキから言われていた言い訳を使って答えた。




「貧血かぁ、もう大丈夫なの?」



すっかり信じた彼女の言葉に、曖昧に笑う。




「ねぇ、名前で呼んでも良い?」



「うっ、うん」



思ってもない事を切り出され、かなり焦る。



こっちに来て友達もいないし、嬉しいんだけど直球と言うか『貧血大丈夫?』の次が、突然名前の話って・・・



話題の切り返しに付いて行けない。



でも、嫌だなって思わないのは、彼女の悪気の無さが伝わるから。




「じゃ、亜美!」



いきなり呼び捨て?!



そう驚きながらも、少し嬉しい。




「亜美は、私の名前知らないでしょ?」



痛いとこを突かれた。



視線だけ名札に向けるけど、うっ。



それに気付いた彼女は、自分の手で名札を隠してしまう。




「えっ、とぉ・・・ごめん」



「だと思った。
私の名前は、麻生 愛美(アソウ マナミ)。愛美って呼んでね」



「うん、分かった」



「・・・呼んでよ」



「愛美」



「うん、昼休み一緒にご飯食べようね」



見た目も可愛いけど、名前まで可愛いんだ。



名前を呼ぶと嬉しそうに笑う愛美は、お人形みたい。



宝塚で言う娘役みたいに守ってあげたくなるオーラ全開の笑顔に、何故かキュンとしてしまう。



かなり押され気味ながら、友達ができた事は素直に嬉しい。


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