神の国~女神に恋した王子様~【修正執筆中】

序章 【君のこと】

済んだ青空を白い鳥が翼を羽ばたかせ、ふわりと羽を舞わた。それは小高い丘にそびえる宮殿のテラスにそっと着地する。


宮殿を中心として広がる石レンガ造りの街、
____へパトス。
そこを首都として広大な領土を有するのは長い歴史を持つ
____シュタミナ王国。


領土には鉱山があり大量の金や鉄が採掘され、四方に伸びる交易路には多くの貿易船や商隊が往来している。それだけでなく、多くの分野にわたり学問を極める研究者や屈強な軍隊を有する国家はこの地域一帯を治めていた。

そんな栄えた国の全てを統治する中心、そびえ立つ王宮のとある場所。



「ちょっと休憩~」

テラスに現れた男は伸びをして、白い手すりを握ると眼下に広がる街を見下ろした。

「今日も平和だなぁ」

嬉しそうに弧を描いた口元と優しい目に気付いた平民の子供が
「デイル様だ!」
と頭を下げたのに返事をすると、背後からバタバタと鳴る足音と気配を感じる。


「あー!!デイル様!サボってないで早く仕事に戻って下さい!!」



振り返ると、少年と呼ぶには老けており、青年と呼ぶには少し早そうな従者が逃がさまい。と迫ってくる。

「げっ!!ペルス..!俺は休憩中で..」

「休憩ならさっき取ってらっしゃったでしょう!?
あなたのベットにこのイヤリングが落ちてましたよ!」

ブラーンと指から垂らされるソレは日光を赤く反射させて憎たらしく輝き、明らかに女物。動かぬ証拠にギクリと肩を震わすと、従者は主の情事にため息を落とす。

「いや..その...貴族の娘が抱いてくれと迫ってきて...巨乳だったから...つい..」

馬鹿な言い訳に、彼はやっぱりため息。

「まっまく..昼まっからお盛んなのも結構ですが、程々に!
あなた様は国王陛下の名代で軍部を預かっているのですよ!?領土...いや、国民の命はあなたの采配にかかっている。だから...」

「大げさに言うなよ~、俺が担ってんのは首都と王宮の警備だけ!実質は親父が仕切ってるだろ」

「そうですけど...!あくまで"今は"ですからね!
おいおいは皇太子が即位なされて、王弟になられるデイル様が軍部の最高司令官となられるのですから。その為に今から半分を任されていると分かっていますよね?」


「分かってるよ...それぐらいは..」

シュタミナ王国には2人の王子がいる。
金髪に緑色の瞳を持つ兄は次期国王に。
そして同じように金髪に緑色の瞳を持った弟は、後に即位するであろう兄の力となる為に国の要である軍部を任されていた。

半分。だが、実態はその殆どが彼に任されていると知っているのは国務の采配をした国王と側近。

元々、器量のある彼だったが、山積みの仕事に縛り付けられる様は側近から見ても少し可愛そうだったが、仕方ない。

主に仕事をさせるのが、彼の仕事なのだから。


「さあ、執務室に戻りましょう」

手を添えて促すと、相変わらずテラスに向かう主は言った。


「でも、それは俺が他国に売られるまでだろ?」

言葉と共に拗ねた顔をした彼に、側近は全力のフォローを入れる。

「売られるだなんて言い方が悪いんですよ…!
運があれば他国でも王になれます。その時は国を治める為にここで学んだ軍学も必要となるでしょう」

「あくまで運だろ!?どっかの国の王族と結婚しても王になれやしない。と言うか、王になりたい訳でもないんだよ。俺の望みはそんなんじゃなくて...!」

「あー、もう、駄々をこねてないで執務室に戻りますよ…!!」

「って、おい!!」

それ以上は聞きたくない、と主の腕を掴んで引っ張る従者は廊下の奥へと消えた。

抵抗も虚しく連行されて行くデイルの背中で羽が風に揺らされ、ふわりと舞った。

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