初恋みるく【完】




「…にしても。
よく泣くの我慢したな?さすが。」



どこまでも甘い先輩は、頭を撫でながら私のことを誘導し、グズる私をソファーに座らせた。



「…うっく、甘いですよ。
さっきまで…っ、説教してたくせに。」


部長としてのあの厳しい表情を思い出して、顔を覆った手のひらの隙間から先輩を見つめる。


ソファーの上に胡座をかいて、体ごとこちらを向いた先輩は、小さく笑い。




「同居人をエコヒイキして何が悪いんだ?
今はブチョウじゃないしな。
同居人としては、やっぱお前の頑張りの方を誉めてやりたいんだよ。」


「…」



至近距離での、大人な笑みに心臓がざわつく。



もう…弱ってるところにさ。
みるみる入り込んで、染み込んで。



どんどん私のなかの気持ちを大きくさせるんだ、この人は。




「…もう…ミス、しません。
みんなにも…迷惑かけないように頑張ります。」



唇を噛んで、そう宣言すると



「ちげーだろ。」



むっと顔を曇らせて、私をきつく抱き締める。



…な、なにが違うの?


って焦ってる私をよそに。
先輩はキャリアを積んだ上司としての言葉を冷静に紡ぐ。




「ミスしない、迷惑かけない。…無理だろ」

「…っ」


「俺は、お前に思いっきり泣けって言ってるんだ。まだ泣ききってないだろ、心愛」


「…え?」



とぼけた声を上げれば、はあっと深いため息が耳にかかる。




「まだ我慢してんだろうが。俺に気を遣って。」


「…」



はい。だなんて言えない。

私のせいで、いつも以上に動き回った律先輩。頭を下げてくれた律先輩。



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