初恋みるく【完】



「辛かったね。痛かったね。
お母さん、ごめんね。私のせいだよね。…っう」


俺は、佐月の背中を抱きしめる。
自分を責め始める彼女は痛々しくて見ていられなかった。


通夜の間、凛々しく前を向く彼女を思いだすと尚更だ。


昔からしっかり者で、片親であることで母親が悪くいわれないように、学生時代はずっと優等生でい続けた彼女。


佐月は、母親のために頑張り続けただろ。
どうしていつも自分を責めるんだよ…


心が潰れそうに痛くなる。
腕の中にいる彼女の存在がいまにもなくなりそうで怖い。



「私が、県外に就職したから…
だから、お母さんの病気が悪化したのにも気づかなかった。

お母さんが倒れてからも、仕事ばかりでろくにお見舞いにも行ってあげられなくて…

私を育てるために無理して働いたからいけなかったのに。
元々、体弱かったのに…」


「佐月…」


捲し立てるように、淡々と言葉を紡ぐ彼女は、瞬きも忘れておばさんを見つめる。



「私が生まれなければ…
私がこの世に生れなければお母さんは…お母さんはっ…」


「佐月…っ!」



彼女の肩を掴んでゆする。

いつもしっかり者で…姉のような存在の佐月が…


一度だけ見たことのある、あの時の佐月に豹変する。



怖い。いつもの佐月に戻さないと。
俺は彼女と目を合わせようと、必死に彼女をゆする。


視線が合う。なのに、佐月は俺を見ていない。
目が合っていない。


俺以外の何かをみるように、遠くを見つめる。




「お前のせいじゃないから。
おばさん、お前の為にずっと頑張ってただろう?

佐月がそんな風に言ってしまったら、おばさんの頑張りどうなるんだよ。

おまえは、おばさんが生きた証だろ?しっかりしろよ!」


「…律くん…っう、…うわぁっ…」


「…っ」



俺は何も言わずに泣きじゃくる彼女を抱きしめた。


俺に抱きつく彼女は今にも消えてしまいそうで恐ろしかった。




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