初恋みるく【完】

4th:恋は狂おしい /彼女と幼なじみ

***心愛サイド***



佐月さんのお母さんが亡くなってから1か月がたった。



「お先に失礼します。お疲れさまでした。」


「あれ、相沢部長、仕事大丈夫なんですか?」


若林さんが先輩に尋ねる。
先輩は苦笑いを浮かべて、軽く頭を下げた。


「ちょっと用事がありまして…また後で戻ってきます。」


「部長も大変っすね。」


「すみません。とりあえず、お疲れさまでした。」



足早に立ち去った部長に、執務室内の何人かが「女だな…」と楽しそうな声が聞こえてきた。


違うもん。彼女は私だもん。
少しだけ唇を噛んで、キーボードをたたく。



「あれどうしたんだ?」



隣の席の入山がこっそり私に声をかけた。



「知らない。」


目線も送らずにそれだけ言った。


本当は知ってるよ。でも言いたくない。


「…高梨、なんか困ったことあったら言えよ?」


そういう入山はいい奴過ぎると思う。


ごめんね。冷たい態度とったのにやさしくしてくれてありがとう。


彼のやさしさが心にしみる。
自分のさびついた心が恥ずかしくなる。



ブー…ブー…


先輩が出っていってからしばらくして、私の携帯が震えだす。


画面には、メッセージ通知。


”タクシーで帰れよ”


…ここのところずっと定時と同時に会社を出る先輩は毎日このメッセージを送ってくる。


嫌い。…好き。もうやだ。


先輩は、定時で会社を出て、夜が更けたころに会社に戻ってくる。


朝起きて、先輩がいないことも多い。



理由は説明してもらった。
理解もした。


『心愛。相談がある。』


そう切り出されたのは、先輩がお葬式から戻ってきてすぐの時だった。


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