初恋みるく【完】


入山と別れて、先輩のマンションのエレベーターに乗り込んだ。


先輩と会ったら、とりあえず何事もなかったように振る舞おう。とか、


佐月さんのことには触れず、疲れているだろう先輩がゆっくり過ごせるようにしなきゃ…とか


色々なシュミレートを頭の中でこなしながら、部屋の前に着いた。


ポケットから取り出した鍵を差し込んで回す。


ドアを開けると、


「……あれ?」



部屋の中に明かりはなかった。


靴を脱いで、リビングまで向かう。





「……」




真っ暗な部屋に、




……律先輩はいなかった。




「…先輩の、嘘つき。」




律先輩に会うのが気まずいと、入山に話しておきながら…


私は、すごく勝手な女だった。
本当の本当は、先輩が家にいることを望んで、期待していたらしい。



見事に裏切られた。




「……もう、せんぱーい。
沢山シュミレートしてたのに、いないじゃないですかー。」



おどけた声で気を紛らわせようとしたけど、その声は暗闇に吸い込まれて儚く消えた。



深いため息をついてから、部屋の電気をつける。


「……携帯。忘れてたんだ。」


机の上に置かれた携帯を見つけて、それに手を伸ばした。


電源ボタンを押して、映し出されたラインの通知が一件。


…律先輩から。


『ごめん。…』


そこまで表示されていた。
ここから先はラインを開かなければ確認できない。



…ごめんから始まるメッセージなんて、みたくないよ。


三角座りをして、足を抱えた腕の間に頭を下げて、滲む涙を必死にこらえる。

でも、やっぱり少しだけ泣いた。






数時間経ってからちゃんと見たメッセージ。




『ごめん。
佐月に呼ばれたから行ってくる。』





…予想大的中で笑った。

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