初恋みるく【完】

SS:初恋の奇跡 /心愛の骨折





「高梨、カバン持つか?」


「ありがとう、入山!じゃあ、お願い。」


業務時間が終わり、残務整理を終えると、入山にカバンを渡して、私は机の脇に置いておいた松葉杖を脇に挟んだ。


骨折をして、初めていつもの生活がどれだけ楽だったかを思い知る。


コピー機まで紙を取りに行くのも一苦労だし、通勤する時だって満員電車なんて絶対乗れない。


なによりも、社内ですれ違う人の視線がかなり恥ずかしい。


学生の時に骨折してた子とかは、結構いたけどこの歳になって松葉杖ってやっぱり珍しいのかも。


骨折してからいつもカバンを持ってくれる入山と一緒に地下の駐車場に向い、エレベーターが地下まで到着すると、



「…心愛、大丈夫か?」


「律先輩!」


大好きな人が、いつものセリフで私を待っていた。


「部長、俺もいますけど。」


「ああ、ありがとな入山。もう帰っていいぞ。」



そっけないお礼に入山は不服そうに先輩をにらむ。


そんなこと言って、ちゃんと入山を駅まで送ってくれるから、律先輩はやっぱり優しい。


「前から思ってたんですけど、部長って仕事中はにこやかな感じなのに…」


「…なんだ?」


「…なんでもないです。」


「…ふふ、2人ともイチャイチャしないでくださいよー!」



2人のケンカのような掛け合いを聞きながら車の前まで来ると、律先輩が助手席のドアを開けてくれた。


「ありがとう、律先輩!」


「…ん。松葉杖かして。」


慣れた様子で松葉杖を受け取った先輩は、入山が乗った後部座席の足元に松葉杖を積んだ。


「入山と2人で後ろに乗せるのは嫌だ。」って、


この間お家でこそっと教えてくれたことを思い出して、毎度ニヤニヤする瞬間だ。

0
  • しおりをはさむ
  • 554
  • 810
/ 539ページ
このページを編集する