初恋みるく【完】

1st:二度目の初恋 /彼女の朝と残業の夜



窮屈な感覚と、味噌汁の香り。


薄く目を開くと、そこは見慣れない部屋だった。




「起きたか。居候のくせにいい身分だな?」

「...おはよ、ございまふ...」



寝ぼけ眼で見つめた先には、ふっ、と口の端だけを持ち上げる先輩の顔。



そうか、先輩の家に居候してるんだった。



身体を納めた寝袋を芋虫のごとく右へ左へ動かして、そこから抜け出すと


いい香りのするキッチンへと駆け寄る。




「先輩ー、寝袋はやっぱり身体痛いです。」

「まじで寝たのかよ。ソファーあったじゃん。布団も出してやったのに。」



あきれた笑いに、ぶぅー、と唇を突き出していじけて見せると、呆れたようなため息をもらす。


だって、わざわざ押し入れから寝袋出してこられたら、ネタフリだと思うでしょ?




「お前、なんでそんなにお笑いノリなの?」


「えへ、天性?」


「...朝からうぜぇな。」


「おいー!」



大袈裟にピンと指先を伸ばした右手を降り下ろすと、声は出さずに口元だけ、


我慢できない。というように、にっと横に広げて笑ってる。


うう、笑顔...きゅん。


締め付けの激しい心臓を隠して、律先輩を恨みがましく見上げる。



「が、我慢しないで笑っていいんですよ?」


「笑ってねーし」


「ニヤニヤしてますよ?心愛、楽しいでしょ?」


「...」



無視だ。ひどい。


でも、図星ってこと?
それなら、なんとなく嬉しい。

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