初恋みるく【完】

2nd:くすぐったい関係 /曖昧な関係



「心愛、早くしろ。出るぞ」


「え、ちょっと待ってくださいよー」




入社当時よりだいぶ重くなった鞄を担ぐようにして、


玄関で手入れの行き届いた革靴に足を入れた律先輩のもとへ向かう。



二人で玄関を出て、鍵をかけて。


マンションの地下駐車場に並ぶ車の中で、ひときわ目立つBMWに乗り込む。



通勤を共にするようになってから、



「いい車ですねー?」



なんて誉めてみたら、得意顔でこの車の良さを力説された。


正直そこまで興味ないんですけど。


と心の中で呟き、適当に流していたら、



ギロッと睨まれ、頭を小突かれたのちに、舌打ちをされたことを鮮明に思い出せる。




「先輩、スピード狂ですよね。」


「ああ?送ってやってるのに文句言うなよ?
これでもゴールドだっての。」


「いいなぁ、車。
私、高校卒業して免許とってから、一回も乗ってませんよ?」


「フッ、だっせー」


「なんすか、それ!」



そんな会話が、今は懐かしい。



入社から、1ヶ月が過ぎた。




変わったことと言えば、この車通勤と、
仕事内容。



大きなプロジェクトを控えたうちの部署は、最近、準備のため、この上なく忙しい。



これは入山と変わらずだけれど、私たち新人にも責任の大きな仕事を任せてもらえるようになった。


未だにライバル心を燃やす入山だけれど、案外協力しながら頑張っている。


辛いことといえば、教育係の加藤さんのピリピリオーラが半端じゃないことくらい。



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