キスと嘘と甘い火遊び

その1、キス

カチ、カチ、カチ、カチ、


落ち着いた微細な音程で時を刻む秒針を睨むように見つめた。

あの人が褒めてくれたアンティークの時計は午前0時01分を主張している。



「(…………過ぎ、た)」



今週も何事もなく静かな日曜の夜を過ごし、月曜日を迎えた。

そう、何事もなく……。


今日一日睨み続けた時計から微動だにしないスマホへと、ふっと視線を移す。

意地を張るように沈黙を守る相棒は、まるで今の私の状態を写しているようで。


なんだか悔しくてスマホを裏返した。

見ない、見ない。どうせ連絡なんて来ないし。ていうか来ても無視してやるんだから。


なんて言いつつ心の底からは期待がむくむくと顔を出していることは自分が1番わかってる。



「えいっ」



精一杯の強がりとばかりに、柔らかなライトブルーの枕をベッドから蹴落としてやる。


ゆったりと十分に幅のあるベッドはシングルなのに、いつの間にか1人で眠るには広く感じるようになった。



「あーもう…!」



堅いはずの決意も済し崩しにスマホに手を伸ばし、画面をちらりと見てはまた裏返す。

……やることがないからいけないんだ。

寝よう寝よう。


あの人の趣味のアンティークのスタンドライトを消せば部屋は暗闇に包まれる。

1人の夜に慣れさせようとするように、居心地の悪い静けさが体に纏わりついた。





あの人が家で過ごす日曜日。私は今日もまた、眠れない夜を過ごす。

日曜日の夜の喪失感は、帰る場所も待っている人もいる相手を好きになった代償。





だから、好きになってはいけないとあのとき気づいたはずなのに。

諦めなくてはいけないとずっとずっと前からわかっていたのに。


………溢れる涙と嗚咽だけは、想いに正直だ。




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