キスと嘘と甘い火遊び

馴れ初めと嘘と甘い火遊び /読者300人様*感謝記念

「………あの、」

「……………。」

「大丈夫ですか?」

「……………。」

「大丈夫じゃ、ないですよね。どうしよう。救急車呼びますか?」

「……あ、いえ。すみません大丈夫です。少しぼーっとしていただけなので」

「でもこの暑さじゃ熱中症になってる可能性もありますから一応」

「待って!大丈夫です、本当に」

「それなら無理強いはしませんが。さっき目がなんというか……虚ろ、に見えたので」

「はは、(……見惚れてたとか言えねー)」

「余計なお節介ですけど体には気をつけてくださいね。それじゃ、」

「ちょっと待って!」

「え?」

「………あ、いや」

「やっぱり救急車呼びますか?」

「そうじゃなくて。声をかけてくれてありがとうございます」

「いえいえ、何ともなくてよかったです」

「良かったらお名前と会社名教えてくれませんか?」

「……………。」

「親切にしていただいた記念、じゃなくて。ほらよくあるじゃないですか。正義のヒーローの名前を最後に聞くって。……あんな感じ?」

「……………。」

「って怪しすぎますよね、俺。変なこと言ってすみません。忘れてください。じゃ、」

「……葉山デパートの有村です。ファーストネームと支店名は言えません」

「葉山デパートって葉山グループの?」

「もしかして葉山の社員の方ですか?」

「あー………違いますよ。昨日ニュースに出ていたので関係あるのかなーと思って。あはは」

「次期社長候補の件ですよね。お騒がせしております」

「どうして有村さんが謝るんですか。世間を騒がしているのは社長の息子でしょう?」

「葉山グループの名前を背負っている以上、本社の問題は私の問題でもありますので」

「……………。」


「でも専務の気持ちもわかるというか、周りに人生を決められたくないと思うのは当然だと思うんです」


「え…?」

「……出過ぎた事を言いました。忘れてください。葉山の社員として不適切な言葉ですね」

「有村さんはもしかして、お……じゃなくて、彼の味方なんですか」

「…………この話は忘れてください。ごめんなさい。少し、社のことを深く話し過ぎました」

「あ、はい」

「それでは、熱中症にはお気をつけて」



『馴れ初めと嘘と甘い火遊び』



「専務!?どうしたんですか!」

「うるさいな。仕事してるだけだよ」

「え、だって、あんなに嫌がってたのに。ボイコットして朝まで呑んでやるーって言ってませんでした?」

「呑んだよ。んで、心境が変わった」

「は、?」

「俺やっぱ社長になるわ。親父に言っといて」

「は!?」



“有村さん”を見つける三日前の、葉山さんの話。



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