キスと嘘と甘い火遊び

【another story】葉山さんの場合① /総合6934位感謝*記念

葉山さんの場合。


*****



「りぃ、好きだよ」


「……んッ…、葉山さ…」



意識などしなくても好き、愛してるというらしくない甘い言葉がするりと零れ落ちる。


大切なのに優しくは出来なくて。

噛み付くように唇を重ねては僅かに開いたその隙間に少し乱暴に舌を差し込む。



「りぃ、好きだよ。早く会いたかった……」



苦しげな表情をしながらも必死で応えてくれるりぃに自制心が効かなくなり思わず押し倒す。

狭いベッドがここに二人は重すぎると主張するようにぎしりと大袈裟に軋んだ。



「月曜は嫌いだ。一日会わなかった分、りぃが俺から離れちゃった気がして焦る」



りぃは自分の腕をブラウスから引き抜く俺を困ったように見つめるだけで何も言わない。


…だから嫌なんだ。

俺だけが求めているようで、そんな俺はりぃを困らせているだけのようで。

月曜日はそれが露骨に見えてしまうから。

焦る。


気を引くようにその白い肌にいくつものキスマークをつけてもりぃはただ困った顔をするだけ。



「りぃ、りぃ……」



何も言わずに俺がワイシャツを脱ぐ姿を見ているりぃに拗ねたように口を尖らせてキスを落とす。



「……何か言えって」



ダサいって分かってる。

りぃはこんな女々しい男なんて嫌だろうなってことも。


でも優しいりぃはそんな俺の弱さを受け入れるようにそっと頰に手を置いてくれるから。

期待してしまうんだ。



「俺のこと好き?」



そう聞けば黙って頷く。

でも、



「じゃあ、……愛してる?」



そう聞くとりぃはいつも何も答えずに誤魔化すように自分から唇を重ねるから。


もう慣れてしまった。

期待した答えが返って来ない痛みにも。

機嫌を取るように積極的になるりぃに喜んでしまう自分の哀れさにも。


行き場のない息苦しさから目を逸らすようにりぃの体を愛撫し舌を這わせる。



「………葉、山さ、んッ…」


「りぃ、俺のこと愛してるって言って?」


「…………、」


「…言ってくれよ。嘘でもいいから」



懇願すればりぃは余計に固く唇を噛んで涙をぽろぽろと零すから。

俺の前では泣いてばかりのりぃに苛立って。

大切にしたいのに泣かせてばかりの自分に腹が立って。


顔を歪めて乱暴に体を寄せてしまう。



「……お前、はッ……俺のこと、どのくらい好きなの?」


「………あッ……んんッ、…」



自分が本当に答えを欲しているのか、愛してると言われればそれで満足なのか俺自身も分からない。


もしかしたら俺は。

ただ彼女の綺麗なアルトの声が“愛してる”と紡ぐ音を聞いてみたかっただけなのかもしれない。



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