キスと嘘と甘い火遊び

遺伝と嘘と甘い火遊び /読者2,000人様感謝*記念

「…、」

「僕、迷子?」

「………ま、まいごじゃねぇしっ!」

「そっか。声かけてごめんなさい」

「…、」

「えっと、服…」

「ね、ねーちゃんがまいごだからな!僕じゃないからな!」

「あ、はい。じゃあ私と一緒に迷子センターに行こっか」

「だからまいごじゃねー、って」

「(………生意気っ、)迷子のお姉ちゃんが来てるかもしれないから行ってみようよ」

「………………うん」

「エレベーターで1階に降りるね」

「…、」

「お姉ちゃんとお買い物に来たの?」

「ちがう」

「そっ、か」

「とーちゃんのシゴトみにきた」

「お父さんここで働いてるんだ」

「ねーちゃんが、みにいこうっていったんだ」

「もしかして………佐渡くんのお子さん?」

「……さわたり?ちっげーし」

「スミマセン」

「僕はけいただからな!さわたりなんかじゃねーからな!」

「けいたくんか〜、いい名前だね。あ、着いたよ」

「だろ!」

「うん、素敵な名前だと思うな。………あ、桜田さん、お疲れ様です」

「りーちゃん、お疲れ様。迷子?」

「まいごじゃねーぞ!まいごのねーちゃんをさがしにきたんだぞ!」

「ほーほー、威勢がいいねぇ。じゃあそこに座ってね」

「飴どうぞ。何個か質問させてね。けいたくんは今いくつですか?」

「…………6さい」

「6歳ね、ありがとう」

「コドモだとおもっただろ!」

「え?」

「コドモじゃないぞ!“こんやくしゃ”だっているんだからな!」

「………こ、婚約者、いるの?」

「ねーちゃんが“こんやくしゃ”はほんとうはオトナにしかいないんだよっていってたから、僕はコドモじゃないんだ!」

「(なんだか……嫌な予感)ねえ、けいたくん」

「なんだよ」

「名字、教えてもらってもいいかな?」

「はやま。はやまけいた」

「…………………やっぱり」

「え、りーちゃん?どういうこと?」

「けいたくんは社長のご子息だと思います」

「えぇ!?葉山の御曹司!?」

「おんぞーし?」

「と、とにかく早くお姉ちゃん見つけた方がいいよね?」

「そんなに焦ることはないと思いますけど」

「だってご令嬢だよ?放送かけなきゃ」

「……お願いします」

『♪〜葉山、けいたくんの、お姉さん。
けいたくんが、迷子センターで、お待ちです。
西館の、1階奥にあります、迷子センターまで、お越しください』

「すぐにお姉ちゃん来ると思うから、ちょっと待ってようね」

「ねえ、りーっていえにいるコイとおなじなまえ」

「コ、コイ?」

「とーちゃんがすきだったひとのなまえなんだって」

「…………好きだった、人、」

「やきゅーせんしゅのあだなだっていってた」

「そ、そうなんだ」

ガチャッ、

「啓太っ!!」

「あ、ねーちゃん!」

「おぉ、早いねぇ。放送聞いた?」

「うん。来る途中に聞いたの」

「そっか、良かったね、啓太くん」

「まあな!」

「ほら、行くよ。ここはパパの会社だけどここにはいないって教えてもらった」

「えー、なーんだ」

「おばさんたちにありがとう言って。帰るよ」

「(…………お、おばさん)」


「ありがとーございましたー。えっと、さくらださんと“りーちゃん”」


「…ッ、」

「はーい、気をつけて」

ガチャン

「にしてもすごい偶然だねぇ」

「本当ですね」

「確かに女の子は社長の面影あったけど男の子はお母さん似だね、あれは。でもちゃっかり名前覚えてくれた人懐こさは社長譲りかねぇ」

「(………似てた。名前を呼んだときのあの悪戯好きな子供みたいな笑い方)」



『遺伝と嘘と甘い火遊び』



「あ、桜田さーん。小学生でもお客様の前でファーストネームはちょっと…」

「あれれ、またやっちゃった!りーちゃんだけは咄嗟に名字が出ないんだよね。許してね“山本”さん」

「まあ、名字変わるって慣れないですよね」

「そうそう。もう結婚してから5年も経つのにねぇ。そう言えば支店長には間違えて旧姓で呼ばれたんだって?」

「はは、そうでした。私も支店長のこと未だに佐渡くんって親しく呼んじゃうときあるのでお互い様ですけどね〜」


10代の葉山さんより生意気そうな葉山Jr.の話。




0
  • しおりをはさむ
  • 56
  • 1269
/ 41ページ
このページを編集する