キスと嘘と甘い火遊び

お誘いと嘘と甘い火遊び /読者4,000人様感謝*記念

「もしもし、」

『あ、有村さん。今大丈夫?』

「はい。ちょうど帰宅するところです」

『それは良かった。ねえ、今夜あいてる?』

「…、」

『もしもーし?』

「あ、あの!」

『ん?』

「葉山さんは葉山の専務です」

『うん、知ってるよ』

「でも私は一介の社員に過ぎません」

『………ああ、そういうこと』

「先日のお食事はとても楽しかったです。でももうこれ以上専務と私的に会うべきではないと思うんです…」

『心配いらないよ。周りの目が気になるなら遠くに出かければいいだけの話だ。店を貸し切ってもいいし』

「そうじゃないんです」

『じゃあ何が心配?何が怖くて有村さんは私に会いたくないの?』

「……………いからです」

『ごめん、もう1度言って』

「釣り合わないの!私にとって専務は雲の上にいるような人だから。どうして私なんかを誘うのかわかりません」

『どうしてだと思う?どうして私が店を貸し切ってでも平社員の有村さんを食事に誘おうとしていると思う?』

「………わかりません」

『有村さん。私はね、葉山の平社員と食事がしたいわけではないんだよ』

「えっと、?」


『あなたと食事に行くことは初めて会ったあの日にもう決めていた。だから有村さんがたとえライバル社に勤めていたとしても俺はきっとあの手この手で食事に誘ったと思うんだ』


「(………俺、って言った)」

『立ち場なんて考えなくていい。有村さんを誘っているのは葉山の専務ではなくて道端で青い顔をして救急車を呼ばれそうになった男だ』

「………前は上司の権限で無理やり食事に誘いましたよね」

『(そうきたか…)そうだっけ?』

「とぼけないでください!専務が評価を下げると仰るから…!」

『わかった。じゃあ今回は有村さんの自由だ。気が向かないなら道端で声をかけただけの男の誘いなど断ってしまえばいい』

「…、」

『(………断るな断るな断るな)』

「では、」

『(え、まじで!?断るの!?うわ、さっきの俺殴りてー)』

「もっと庶民的な場所に行きませんか。フォーマルなレストランでは専務とお食事している感が抜けないので」

『え?』

「だめ、ですか?」

『いえまさか!行きましょう!実は私、居酒屋とかの方が詳しいんですよ。旨い酒が飲める店紹介します』

「はい、楽しみです」



『お誘いと嘘と甘い火遊び』



「美味しいですね、ここのお酒」

「でしょう?隠れた名店です」

「こんなにいいお店をご存知なのに、どうして前回はフォーマルなレストランだったんですか?」

「……有村さんの雰囲気に合ってると思ったので(見栄張ったとは言えねー)」

「そうですか。…………嬉しいです」

「え、」

「え、あ、いえ。何でもないです」

「あ、えっと、はい」


りぃの笑顔にときめく葉山さんと、そんな葉山さんに慌てるりぃの話。




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