【完】歪愛

SS②


結局、蒼衣の気持ちは分からなかったけれど、拒絶されることは無くなった。
いつも通りの毎日。


ある日曜日、インターフォンが鳴った。
蒼衣の家に来客なんて、珍しい。
基本的には、ネットで買ったものなんかの配達だから、私が出ることが多い。

今日も、何か注文したものかな?と思い、カメラを確認する。
あれ?スーツを着た若めの男性だ。
でも、怪しい人には見えなかったから、とりあえず、玄関を開ける。

「こんにちは。あれ?蒼衣のお友達かな?」

「え、えっと、こんにちは…、あの、どちら様ですか?」

「あぁ、失礼。蒼衣の部屋から女の子が出てくるとは思わなくて。私、成瀬暁(あかつき)と言います。蒼衣の兄です」

「あかつ…、あ!お兄さん…」

前に勝手に見たアルバムに載ってた暁さんか。
なんとなく面影がある。
キリッとした顔の黒髪の人。


「君は…、蒼衣とどういう…」

「てめぇ!」

蒼衣が私を自分の後ろに隠す。
すごい力。
あと、蒼衣がこんなに声を荒げたのは初めてかも。

緊迫した空気が流れる。


「蒼衣、兄に向かってテメェは無いだろう」

「何しに着た」

「何って…、また父さんの思いつきで振り回されてるんだ。協力して欲しい」

「…、前回で最後っていう約束だったろ?」

「そうだが…、そんな理屈が通用するような父親では無い。蒼衣もよく知っているはずだ」

「…、で、用件は?」

「会社の感謝祭に蒼衣も参加して欲しい。そこのお嬢さんもいっしょに」

「…、はぁ?こいつは関係ない」

「父さんが言ってたんだ。もし、蒼衣に相手がいるなら同伴してもらうようにと」

「待て。こいつはそういうのじゃない」

「とにかく、来月の第3土曜日、迎えに行く」

「突然来ておいて勝手だな」

「その勝手に振り回されてるのは私も一緒だ。だが、父には感謝している、だろう?」

「くそっ…、こいつの件は父さんには伝えないでもらえない?ちょっと考えるから、保留にしてて欲しい」

「蒼衣1人でも、感謝祭に出席してくれるなら、飲もう」

「分かったよ。それは出る」

「物分かりのいい弟で助かるよ」

「…、じゃあな」

「あぁ。お嬢さんも、また」

蒼衣の後ろにいる私を覗き込むように、暁さんは言った。

「…、あ…」

「兄さん」

「そんなに怒るなって…、またな」

そういうと暁さんは嵐のごとく去って行った。




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