【完】歪愛

⑤緊縛 /物理


朝食を作り、2人で食べた。
やはり、冷蔵庫内の材料は潤沢で、いつ誰が補充しているのか疑問だ。

「もう食べないの?」

「え、うん」

成瀬と食べていると、箸が進まなかった。
そもそも、誰も朝ごはんなんか作ってくれないし、食材も、食材を揃えるお金もなかったから、食は細いのだけれど。

黙々とご飯を食べる成瀬を見る。
ご飯を食べているところや、寝ているところを見ると、ちゃんと人間なんだな、と思うけれど、無表情の時は人形かマネキンじゃないかというくらい人間味がない。

「見られてると食べづらい」

「あ、ごめん」

食べづらいという感覚はあるのか、この人にも。
驚くと同時に、自分でもびっくりするくらい凝視していたことがちょっと恥ずかしくなった。

かといって、人が食べてる時に席を立つのも失礼だし…、手持ち無沙汰になって自分の手を眺める。
見慣れた手。
左手には最近できた傷。
赤黒く、鬱血していた。

「何?アザ、嬉しかった?」

「そんなわけないでしょう」

あなたと一緒にしないで、変態。
そう言ってやりたかったけれど、後が怖いから黙る。
口は災いの元だから。

「ごちそうさまでした」

成瀬が手を合わせて、席を立つ。
合わせて私も席を立ち、食器を片付ける。

食器を洗っていると、寝室の方から成瀬が私を呼ぶ。
まだ片付けてないんだけど。
ちょっとめんどくさいと思いつつ、私は軽く手を拭き、寝室に向かった。



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