【完】歪愛

⑤緊縛 /ストックフォルム


気づいたら、私は成瀬に抱きしめられながら泣いていた。
回された腕の感触、背中に当たる肌の感触から察するに、成瀬も服を脱いでいることがわかった。

さっきまでの私だったら、離れようともがいていたと思う。
しかし、今の私は縋るものを欲している。
回された腕にしがみ付いて泣いた。

落ち着いた頃、
「さ、お風呂入ろう?」
と、成瀬が浴室に私を誘導した。

大人しくそれに従っておく。
なんていうんだっけ?こういうの。
思い出した、ストックホルム症候群。
こんなやつに縋るなんて馬鹿みたいだって冷静な自分もいるけれど、それでも離れられない。


私の体や髪は、甲斐甲斐しく成瀬が洗ってくれた。
まるで人形のように世話をされる。

浴槽に入った後も、私は後ろから抱え込むように座る成瀬の体に寄りかかるようにしていた。

「従順なときは可愛いのにね」

寄りかかる私をさらに強く抱き上げながら、成瀬が言った。
可愛い という言葉に少し反応してしまう自分が恨めしい。
結局のところ、私は、「可愛い」「愛している」と言われたいんだ。
そして、そう言ってくれる人に縋りたい。

成瀬に変態だと言ったけれども、私も大概なんだろう。
もう普通には戻れない気がした。




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