君との距離は【完】






「帰ろうか」

『!』



破るところだった約束が果たされることに安心感を抱きつつ足を進める。


しかし、気になって振り返ると彼女は立ち止まったままだ。



「どうしたの?」

『良いの?』

「?」

『一緒に、帰ってくれるの?』



何を心配しているのか知らないが未だに伝わっていないのだろうか?彼女に非はないと言ったのに。



「約束した」

『うん』

「あと、皆川さんは何も悪くないのに躊躇する必要ない」

『……はい』



もうすっかり暗いけれどこれ以上暗くなる前に彼女を駅まで送りたかった。夜道は危ない。小柄な彼女が歩くには特に危険だ。もし何かあっても守ってあげられるのはここから駅まででしかない。



「隣、歩きたいんでしょ?」

『、』



短く放った言葉は酷く自意識過剰に聞こえて彼女が心変わりしていたらどうしよう、と一瞬過るも信じてみることにする。


先に歩き出した僕の後を、はっ、とした様子で遅れて足を進めた彼女は変わらず隣に並んでくれた。
試してごめん、ありがとう、という気持ちを込めると自然と足並みは彼女に合わせたものへと変わる。


さっきまであんなに早く過ぎていた景色が随分のんびりとなったが、彼女と居るとそれが心地良く感じる。


皆川さんは見るからににこやかで嬉しそうな表情をしているので特に何もなかったはずなのにこちらまで嬉しくなって小さく笑みを零す。



『わあ、星綺麗ー』



つられて見上げた夜空には確かにいくつか星が煌めいていた。いつもあるはずなのに、隣にいる彼女の表情で新鮮に感じる。何だっけ、秋の四辺形?頭の中で星を繋いでみる。


隣の彼女は腕を空に向かって伸ばし遠い、と呟く。星を掴もうとする仕草はまるで子どもだ。まるでというより子どもと同じ行動をしている。
顔も完全に上を向いていて今はすれ違う人が居ないから良いものの危なっかしくて仕方ない。


昨日も月に向かって手を伸ばしていたがこの無防備さは放っておくとすぐに狙われそうだ。


いつでも傍に居てくれたらそれが1番安心する。そして癒されるのだろう。


だからどうかこれからも笑い続けてくれますように。
いつか聖也に見せていたもっと楽しさに溢れた笑顔を見せてくれますように。



『あ、流れ星?』



今はただ、その無防備も無邪気な笑顔もなくさないようにするから。


君が思っているより僕は君に振り回されているけれど、それも幸せに繋がるなら悪くない、とか思ったり。




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