君との距離は【完】

××mm /電波越しコミュニケーション






時刻は20:00


夜ご飯を食べ終えて自室にてじー、っとスマホを見つめては画面が真っ暗になる度にタップすること十数回。


何てことないありきたりな文章を眺めてははぁ、と溜息を吐いてやっぱりそれ以上指が進むことはない。


どうしよう、こんなにどうでもいいことを送っても迷惑にしかならない気がする。でも、逆に長文を送っても返さないといけない、という負担になりかねない。


返事は欲しいけれど、義務感で返されるのは悲しくて。


離れていても話したい、と思っていてほしい。


そんな私は漸く葉山くんの連絡先をゲットしたのである。


寧ろ付き合って半年も経つというのに連絡先すら知らなかった事実にお互い気付いていなかったことに驚いた。





「まさか大学が一緒だなんて…」

『うん』

「でもこれからも一緒に居られるんだよね!」

『そうだね……あ、』

「?」

『入学式一緒に行く?』

「いいの!?」

『皆川さんが良ければ』

「いいい、行きたいです…!」

『じゃあまた時間決めようか』

「うん!また連絡す……あれ?」

『ああ、交換する?』





という流れがありまして。
今の今まで文明の機器に頼らず、すれ違い続けてきた私たちも現代に追い付いた。


家に帰って来て、最初の挨拶くらいはしておこう、とアプリを起動させたものの、〈こんにちは〉から始まった挨拶も送る勇気がなさすぎる所為で〈こんばんは〉に変わってしまった。こんなはずでは。


想いが通じようがネガティブ思考は治らないし、相変わらず臆病でなかなか行動に移せないところも変わらない。


このままでは送れないまま日付を越えてしまう。そうしたらいよいよ挨拶の文章は送れないままになるだろう。


そうしたら今後もっと葉山くんに連絡するハードルが上がってしまう。


本当は普通の恋人のように気軽に他愛もない話をしたいし、毎日ではなくても良いから声が聞きたいと思ったときに電話がしたい。


思っているだけで指が動いてくれなくてまた溜息。




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