私のタイプは君じゃない!






「いつまでもさくと一緒に居られるわけじゃないんだからね」

『……一緒じゃないの?』

「嫌だよ。ずっと一緒だなんて」

『………え?』

「少なくとも私は彼氏が出来たらさくのお世話から解放されたい」

『り、んちゃん?』

「今だってどれだけ自分の時間が奪われてるか……って、さく?」

『りんちゃ……』

「ちょちょ、ちょっと!高校生にもなって泣く!?」



さくは大きな目をうるうるさせて今にも零れそうなほど涙を貯めている。


今の私の発言に泣くようなところあったの?一般的発言しかしていないよ?


幼馴染だからってこれからもずっと一緒に居るなんてどこの少女漫画でしょうか。


ここで「一緒に居ようね」と約束し合えるのは両想いの場合だと私は思っている。ただ世話をさせられている迷惑な隣人と誰がいつまでも一緒に居たいと思うだろうか。


と、ここまではっきり言ってしまうと完全に泣き出しそうなので今は黙ることにするが、いつかはちゃんと言わないとこの自堕落生活はいつまでも直らないと思う。


本当は今すぐにでも直してほしいところ。登校しようと家を出たらさくも準備完了という日が来たら毎日がハッピーライフに変わるだろう。遠すぎる理想。


しかし実際には涙が零れる前にティッシュを差し出して、何なら赤くならないように拭いてあげるくらいのことまでしてあげなければならない。



『りんちゃん、離れて行かないで』

「…………」

『りんちゃん?』

「約束は出来ない」

『……』

「わぁぁ、だから泣かないで!」



女子の私よりも女々しくて、1人では何も出来ない。


小さい頃から周りからはモテるのに、何かある度に私に縋りついてくる。


手の掛かりすぎる幼馴染からはとりあえず今は離れられそうにない。



『りんちゃん、いつもありがと』



こうしてずっと欲しいと思っていた言葉を急に出してくるところも天然にして恐ろしいところ。


さらり、髪を耳にかけて耳元で囁かれた柔らかい声に朝から怒りっぱなしだった心がすんなり絆されてしまう。


というほどの効果はなく。
やっと今日初のまともな発言を聞けたなあ。と溜息を押し殺してぼんやり思いながら、また涙を拭ってあげるのだった。





毎朝の憂鬱

《日常:その1》
癒し系男子の癒しは幼馴染には効きません






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