私のタイプは君じゃない!

1.癒し系男子の日常 /「一緒じゃないの?」






朝7時。
毎朝私はこの時間に隣の家にお邪魔している。



「おはようございます」

『りんちゃん、おはよう。今日もありがとうね』



隣のお家のおばさんが「はいこれ」とクッキーの差し入れをくれる。



『昨日焼いたの。どうぞ貰って?』

「わぁ、ありがとうございます!」

『いつもお世話になってるからね。夕方におかずも持ってくわ』



朝からこの優しい聖母のような笑顔を見ると私も頑張ろうと思える。


というわけで、うん。頑張ろう。
ここへ来た本来の目的はクッキーを貰うためではない。もしそうだったらどんなに幸せで平和な朝だったことか。



「おばさん、上行きまーす」

『どうぞー』



快い返事を貰ったところで迷うことなく階段を上がって右に曲がる。念のためにノックをするが、反応がないのはいつものこと。


最早ノックするだけ無駄な気はするけれど、いつか返答が来たら良いな、という淡い期待は捨てていない。


''諦めたら試合終了''という名言があるように、いつか私が居なくても良いようにならないだろうか。
まあ、こんなノックの返事があるかないかくらいのことでそんな大層な発想をしても無駄か。



「よし」



小さく気合を入れてから部屋に入る。


入った部屋はシンプルでクッションが落ちているくらい。モノトーンに纏まった部屋は散らかっていないこともあって大人っぽい雰囲気がある。


見慣れた部屋に今更感動することもないので、視線は真っ先にベッドに向く。一人用の黒いベッドには1人分の膨らみ。



「さーくー!」



布団の中で気持ちよく眠っているであろう人物に全力で呼びかける。


しかし、全く反応がないのもいつものこと。


カーテンを開けて布団を引き剥がすと穏やかに眠っている顔が歪む。


寝顔が可愛いから躊躇しそうになるがここで止まってしまっては私の使命が果たされない。




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