おやすみ、いい夢を

コズモはつい彼女に声をかけてしまった。
「なあ、それ取りてえんだろ?」

びくり、と彼女は大袈裟な反応を見せ、コズモのほうを見た。長い黒髪が彼女の顔を半分以上隠していたが、コズモは彼女の驚いた、いや、むしろ怯えた目を見た。

「あ、ごめんな、びっくりさせるつもりはなかったんだけどさ、本届かなくて困ってるみたいだからつい声かけちまったんだ」

彼女はますます怯えた目をした。何か言いたそうに口をぱくぱくさせたが、何も言わなかった。

「はは、そんな怯えた顔すんなって!俺確かに目つき悪いし見た目外人だけど、悪いやつじゃねえから。どれ取りたいんだ?」

コズモは彼女が登っているはしごに近づくと、彼女をひょいと抱きあげ下に下ろした。

「うわ、お前軽すぎ!ちゃんと内臓一通り揃ってんのか?ちゃんと食えよ。あ、ごめん、関係ない話だな。で、どれを取りたいんだ?」

相変わらず怯えた目でコズモを見ながら彼女は一冊の本を指差した。彼女を下ろしたはしごに今度はコズモが登る。

「どれだ?」
コズモは彼女の指の指す先あたりにあるいくつかの本を抜き出すとはしごを降り彼女に見せた。
彼女は一冊を選ぶとなにか口を動かしたが、コズモには聞こえなかった。
「ん?なにか言ったか?」

彼女は首をぶんぶんと横に振ると、俯いた。そしてぺこりと頭を下げ、本を抱え足早に去って行ってしまった。

「あー、怖がらせちまったかなぁ。俺やっぱり目つき悪いかあ」
コズモはじぶんの目つきのせいで彼女を怖がらせてしまったと感じ申し訳なく思っていた。そして、そういえば、彼女の選んだ本と彼女の瞳の色はよく似た琥珀色だった、なんて変なことを手元に残った本を見ながらおもった。

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