永遠回帰

永遠回帰 /第十一章 (未定)

加奈は一度だけホテルを振り返ると、家路に急いだ。

悔しさに次から次へと涙が込み上げた。

関智也の甘いセリフを真に受けて、その気になっていた自分を加奈は呪った。

そんな浮かれた様子を、智也と清明が笑って見ていたのかと思うと、加奈は怒りからくる震えを抑えることができなかった。

「こんなもの!」

左手の薬指にはめられた指輪。

だが、抜こうとしても指輪は肉を押し上げ、関節に引っ掛かってしまった。

「どうしてよ!」

加奈は思わず道の真ん中に座り込んでしまった。

これも作戦だったのか。

あえてきつめの指輪を買ったのは、抜けなくさせるため。

いつまでも加奈を辱めるために、ふたりが画策したことだったのだろう。

力いっぱい引っ張って見ても、指輪が抜けることはなかった。

加奈は我に返ったようにすっくと立ち上がると、すでに冷たくなってしまった涙を手の甲で拭った。

「こんなことしてる場合じゃない。早く家に帰らないと」

自分を奮い立たせるように口に出してそう言うと、加奈は再び歩き出した。

これまでの出来事が、自動的に頭の中で再生される。

その度に溢れ出そうな涙を、加奈は必死に堪えた。

智也と清明が組んでいた――。

これですべての辻褄が合う。

清明の遺体が見つからないのも当然だった。

自殺は――偽装だった。

加奈の怒りの矛先は、見抜けなかった愚かな自分ではなく、智也と清明に向けられていた。

「こんなことして……絶対に許せない」

千夏がこのことを知ったら、まっ先に加奈のことを叱りつけるだろう。

加奈にはわかっていた。

自分に隙があるから、簡単に付け込まれたのだということを。

北鷲海岸で智也が崖から落ちそうになったのも、智也の演技だった。

バックミラーを見て智也が怯えたのも、写真を合成して心霊写真を作ったことも、何もかもが茶番だった。

カナダイアリーも智也が清明に報告し、あたかもそばで見ていたように清明がメールを送りつけてきていただけだったのだ。

昨日、カナダイアリーは届いていない。

それは長谷川奈々という智也の婚約者の出現があったからではないか。

智也が清明に報告できなかったために、メールが送られてこなかったとすれば説明がつく。

よく考えればわかることだった。

加奈は駅に到着すると、そのまますぐに電車に飛び乗った。

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