舞蝶 1 -完-

第二章 /嫉妬

「行ってきます」

「あぁ」


パタンと閉めた車のドアが、廉二さんとの壁を作る。


あれから…廉二さんと視線を合わす事も、触れる事もなくなった。


寂しいと思っても、それを望んだのは私。


あの時、私は従わなければいけなかったのに…。


買われた身分で、主人に逆らった。


きっと…廉二さんに捨てられるんだ。


「美緒、顔色悪いよ?」

「…?」


心配そうに私の顔を覗きこむ恵美の声が遠い。


「美緒?」


私の額に当てられた恵美の手が冷たくて、気持ちいい…。


「熱い!熱あるじゃない!」


熱…?


そう言われてみれば、何となく身体がだるい。

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