舞蝶 1 -完-

第二章 /廉二-side-

美緒が部屋を出て行ってから、数日が経った。


同じ部屋にいるというだけで幸せだったんだと、この数日が感じさせる。


学校への送り迎え、車の後部座席に2人並んで座り、こんなに近い場所にいるのに触れられない。


何度も伸ばそうとした手が、あの日の美緒の泣き顔を思い出すと、柄にもなく震える。


―…美緒に拒否されるのが、怖い。


「行ってきます」

「あぁ」


パタンと閉まったドアが、美緒との隔たりを作る。


校舎へと向かって行く美緒の背中を、ただジッと眺めていた。


「美緒ちゃん、元気ありませんね」

「……」


運転席から声を掛けてきた輝樹に、目を閉じることで返事した。


少し…痩せた気がする。


「食事は」

「食べてはいますが、全部は…」

「……」


仕事の忙しさが重なり、食事すら一緒に取っていない日が続いていた。


“それ、今、避けただろ”


緑色の、いかにもな野菜を皿の隅に寄せていた美緒。


“こ、これは…後で食べるんです!”


見え透いた嘘を吐く美緒に、何度、和まされたことか。

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