舞蝶 1 -完-

第二章 /モデル

「美緒ちゃん、目線こっちね!」


パシャパシャと、シャッター音が軽快に鳴る。


綺麗な衣装を何回も着替えて、カメラの前で色々なポーズを取る。


これがモデルの仕事なんだと、身を持って知った。


…結局、廉二さんには言えなかった。


ガソリンスタンドのバイトが終わってから2時間、モデルの仕事をする。


それが、亨と交わした条件だった。


廉二さんには、バイトの時間が長くなったと伝えた。


けど、それが嘘だって事、廉二さんは気付いているはずなのに…何も言わなかった。


「美緒!終わった?」


撮影用の衣装姿の亨が、小走りに私に近寄ってきた。


「うん、終わったよ」


頷いた私に、そっか、と嬉しそうに微笑んだ亨には、先ほどまでの表情はない。


カメラを向けられた瞬間に見せる“プロ”の顔。


周りのスタッフや、他のモデル達の視線を一身に集めてしまうほどの存在になる。


やっぱり、凄い人。

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