舞蝶 1 -完-

第三章 /舞蝶

「美緒!笑えてない!」

「えっ…?」

「ほら、カメラ向けられたら、嫌な事は忘れろ」


グイッと顎を掴まれ、亨と視線が絡み合う。


今日は、2人で撮影だ。


そうだよね…亨にも、スタッフさん達にも迷惑掛けられない。


ギュッと一度瞳を閉じて、気合を入れ直す。


「はい、2人とも恋人同士みたいにもっと寄り添って」


カメラマンさんの声に、亨はニヤリと笑った。


「美緒、今日は、俺を彼氏だと思って」

「う、きゃあ!」


変な声を上げた私に、亨は大笑い。


スタッフさんもいいね、いいねと笑う。


「集中、集中」


余裕な笑みを浮かべた亨をしっかりと睨んだ。


絶対、わざとだ。


腰に回された亨の手が、2人の隙間を密着させる。


「ほら、恋人っぽく」

「…う、ん」


ゆっくりとキスするみたいに、亨の綺麗な顔が近付いてくる。


恋人っぽく、恋人っぽく…。

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