舞蝶 1 -完-

第四章 /贈りたい物

グイグイとさっきよりも強い力で引っ張られ、着いて行くのがやっとだった。


「いっ…たい…」


思わず零れた声に、驚いたように廉二さんは足を止め、


「悪い…」


罰の悪そうな顔で振り返った。


「……」


一体、どうしたんだろう…。


熊さんと会ってから、廉二さんは何か考え事でもしているようだ。


赤くなった手首に視線を落とし、首を傾げる。


それを―…。


「ひゃあ!」


何を勘違いしたのか、廉二さんはあろう事か、赤くなった場所に自らの唇を当てた。


「痛かったな、悪い…」

「…い、いえ…」


もう、痛さなんて忘れてしまうくらい、ただ、ただ…恥ずかしいです。


「相当痛むのか?」


心配そうな声が、俯く私に落ちてくる。


耳まで赤くなってしまった私に、廉二さんは気付いていないのだろうか…。


「美緒」


いつまでも顔を上げない私を、廉二さんは腰を屈めて覗き込む。


「美緒」


何度も名前を呼ばれる度に、その声にいろんな感情が混じっているようで、切なくなる。


「だっ、大丈夫です!それよりも、帰りま―…あっ…」


グッと顔を上げた先に見えた、ランジェリーショップ。


最近…少しだけ、胸のサイズが合わなくなっている気がする。


太ったのかな…?


サスサスとお腹の辺りを摩る私に、廉二さんはニコリと笑った。

0
  • しおりをはさむ
  • 584
  • 937
/ 293ページ
このページを編集する