舞蝶 1 -完-

第四章 /企み

「あら?あなた、廉二さんのお付きの人よね」


クスクスと、嫌な笑い声を上げながら近付いて来る、真っ赤なルージュの女の人。


トイレに入った私を追いかけて来たかのように、タイミング良く声を掛けて来た。


「付き人じゃありません…」


だったら、何?って聞かれても答えられないけど…。


「別にそんな事、もうどうでもいいけど」

「えっ…―っ!」


トイレの個室のドアを開けようとした手を後ろに引かれる。


バンッ!


「…いっ!」


そのまま身体を押され、背中を壁に押し付けられた。


何…?


一気に起こる出来事に、ただただ茫然とする。


この人…何する気?


綺麗な顔を鬼のように歪めた女の人が、私を見据える。


「目障りなの」


真っ赤なルージュがそう言って歪んだ。


「あなたが現れてから、廉二さん、誰の相手もしなくなったのよ?」


分かる?と、スラリと伸びた足で、私の足を蹴り付けた。


っ―…。


ガクンと膝から崩れ落ちる私の髪の毛を掴み上げ、


「消えてよ」


持っていたグラスの中身を、私の頭の上からぶちまけた。


「―っ」


冷たい…。


ただの水じゃない…ベタベタとする感触と、真っ赤な色。


何で?どうして、こんな事されなくちゃいけないの?


啓さんや藤子さんが綺麗にしてくれた髪も顔も。


廉二さんが選んでくれたワンピースも。


ぐちゃぐちゃ…。


「あら?泣いてるの?」


カタカタと震えだす私に、女の楽しそうな声が落ちる。


こんな事―…。


「ふざけんな!!」


許さない。

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