舞蝶 1 -完-

第四章 /廉二-side-

来賓との挨拶を終え、会場に視線を馳せる。


美緒は何処だ?


「っ」


俺と離れて、美緒が向かったテーブルには、くそガキの姿があった。


あいつ…!


バッと一歩踏み出して、その動きを止めた。


「…いない?」


その横にも、美緒の姿がなかった。


輝樹の立っていた場所に視線を向ければ、その姿もない。


啓は、携帯で忙しく話をしているようだった。


藤二郎は、来賓の上客に掴まっていて…誰も、美緒を見ていない?


ひやりと冷たい汗が額を滑る。


「輝樹!」


無線から声を飛ばせば、すぐに返事が返ってくる。


『今、組長から呼び出しがあって、門の前で待っています』


親父が!?


そんなはずはない。


親父がこの日に出向いた事など、一度もない。


「くそっ!」


嵌められた!


俺の家という安心感が、3人にもあったとしたら、それを見通した―策士。


一体、誰だ!


「美緒!」


探し回って見つけた美緒は、床に崩れ落ちたように蹲っていた。


ガタガタと震える身体を抱き寄せる。


「何があった!?」


無残に崩れた髪、真っ赤に汚れたワンピース。


泣き腫らした、瞳―。

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