舞蝶 1 -完-

第四章 /消えた色

“美緒、3千万”


昨日の夜、廉二さんに差し出したのは、あの日…亨が廉二さんに差し出した小切手。


女が去った後、私の前に現れたのは…亨だった。


全部…昨日の事は、計画されていた事なのかもしれない。


亨を信じていたいのに…。


溢れてくる涙を掬う亨の手が冷たい。


“これで、廉二さんと手を切れ”


言葉が冷たい。


嘘であって欲しい。


―亨が関わっているなんて、嘘であって欲しかった。


「廉二さん、お世話になりました」

「…」


大きな茶色い門の前、少ない荷物をバックに入れバスに乗り込む。


何も言わず、ただジッと私を見つめる廉二さんの視線。


涙が零れてしまう前に、その視線から顔を背けた。


“美緒”


もうそう呼ばれる事はない。


もらった携帯も置いて来た。


廉二さんとは関わらない。


関わっちゃいけない―。

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