舞蝶 1 -完-

第四章 /繋がり

「寒くなったねぇ…」

「そうですね~」


桜さんと2人、スタンドの洗濯機を回しながら、秋の風に身震いする。


吹き抜ける風が冷たくなった。


スタンドのバイトは夏場の炎天下も辛いけど、寒い時の水を使う仕事はまたまた辛い。


「サボるなよ~美緒」


事務所から飛んできた声に、小さく頬を膨らませた。


そんな菅さんの声ですら“日常”を感じさせるから不思議だ。


「おら、客だ!」


だからって、言った傍から控室にサボりに行こうとする菅さんの背中に大きくアッカンベーをしてやった。


スタンドに入って来たのは、シルバーのベンツ。


“E63AMG”


V型8気筒エンジン搭載で、馬力がパワーアップされた車だ。


キラリと光るエンブレム。


あんな落ち着いた車に乗っているのは、きっと紳士に決まってる。


「桜さん!見て下さい!あの車、かっこ―「美緒ちゃん、“あれ”私が行くわ」」

「えっ!?」


珍しく低い声で答えた桜さんは、真っ直ぐにその車に近付いて…。


バン!!!


「!?」


あろう事か、傷一つなさそうなシルバーのドアを蹴り付けた。


う、嘘でしょー!?高級車のドアを蹴ったよー!


信じられない光景に目を見開いたまま、口をあんぐりと開く。


ゆっくりと降りてくるスモークガラスから…。


「随分な挨拶だな」


苦笑い気味の声と、


「あら?あなたこそ、何の用?」

「けっ、けっ、啓さん!?」


やっぱり紳士な、啓さんが現れた。

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