舞蝶 1 -完-

第四章 /廉二-side-

美緒と会うと言っていた啓が帰って来るなり、事務所に呼び寄せた。


「美緒は話したか?」


先を促す俺に、啓は「落ち着け」と冷静な態度を見せた。


「話は聞いた。やっぱり大杉が噛んでいる、「暴力沙汰」をでっち上げてな」

「暴力?」


美緒とそれが関連付かなくて、更に分からなくなる。


「大杉が美緒ちゃんを逆上させて、手を上げた所でカメラに撮られた、それで揺すられてる」

「…逆上?」


美緒が怒るような事なんて、一体…。


「大杉は、美緒ちゃんの優しさに付け込んだんだ」


藤二郎や啓が、美緒の為にと施してくれた気持ちを踏みにじられ、俺の誕生日をぐちゃぐちゃにされた事に、美緒は怒りを抑えられなくなった。


優しい美緒だからこそ、起こりえた。


そして、俺の立場を守ろうと、自らが身を引いた。


水を掛けられ、白い脚には大きな痣を付けられ。


それでも、自分の事よりも俺達を守った。


「…くそっ」


苦しい思いをしただろう。


痛い思いをしただろう。


今すぐ抱きしめてやりたい。


「待て」


事務所から出ようとする俺を、啓は呼び止める。


「待てねぇよ」


今度は、誰にも止められない。


あいつ以外…誰にも。

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