舞蝶 1 -完-

第二章 /居場所

「…くそガキがっ」

「痛っ!」


廉二さん!?


ギリッと手首を掴まれ、その痛さに驚く。


「あいつに近付くな」


車に押し込められ、廉二さんの不機嫌な声が、車内に響いた。


あいつって…小橋君の事だよね?


傍に居るだけで怒ってるって分かる廉二さんの雰囲気に、身体が震える。


「家に向かえ」


運転する輝樹さんにそう告げた廉二さん。


「あ、あのっ、これから―…」

「帰るぞ」


今日もバイトがあるって知ってるはずなのに、有無を言わさず、車は廉二さんの家に着いた。


「風呂、入って来い」

「えっ…?」


家に着いたかと思えば、すぐにお風呂に促される。


…私、何かしちゃったのかな…。


バイトにすら行かせてもらえず、廉二さんがずっと怒っている事に不安が募る。


不安な気持ちを抱え、濡れた髪のまま、風呂場を出た。


ポタポタと、濡れた髪の先から滴が廊下に落ちる。


「……」


閉められた廉二さんの部屋の前に立ち、襖に手を掛けるが、その手が躊躇する。


でも―…。

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